※注意※
『あやかしランブル!』物語全編のネタバレを含みます!!
座談会メンバー紹介

はちゃめちゃの前はカチカチ和風!あやらぶ誕生秘話田沼:和風ファンタジーのゲームで、陰陽師を出すということは決まってました。それで僕が最初に考えたのは「帝国陸軍陰陽部隊」!
秋吉:最初は本当にカチカチというか、重めの設定でしたよね(笑)
田沼:ゴテゴテでしたね。どんな形に落ち着けるべきかずっと模索してました。普通に和風世界で作ると、どうやっても神姫(*)に比べて世界観がこじんまりしてしまうんです。それに制限も多くて……この時代にないものは出しちゃだめ、とか、英語は使っちゃだめ、とか。最初のプロットはその影響を受けてて、伝奇小説みたいな話でした。「山奥の村に謎の幽霊が出てきて……」っていう感じですね。この方向で面白いものが書き進められるか不安だったので、あるとき同僚のアニメーターに相談したんです。そしたら、「これなら住民が全員猫又の村みたいな話のほうが、ぶっとんでてワクワクするんじゃないか」と言われて。僕にはその発想がなかったので、そこまでやってもいいんだ、と驚きましたね。こうして1章が生まれたわけです。
(*) 同社運営のゲーム『神姫PROJECT』のこと。神姫たちと手を取り合いラグナロクから世界を救う、話題の超神化系本格ターン制RPG。
秋吉:初耳。そこではちゃめちゃ和風の種ができたってことですね。
田沼:そうですね、「和風でこういうのはやらないだろう」というラインを無視して、派手さや盛り上がりを重視する方針で動き出しました。だから1章は猫又の村だし、アスカは1章で早速「チャンスっス!」なんて英語を使います。

海南:僕もプロジェクトに参加したとき、最初に言われました。どこまでの和風感を担保するか、この問題で田沼さんがすごく悩んだと。面白く作るには書けないことが多すぎる。仕方ない、幅を広げよう……そんな背景を持つ「チャンスっス!」なんですよ!
田沼:時間の表記も「半刻」とかだったんですが、書いてて具体的にどのくらいの時間なのかピンと来なくて。なので、ユーザーさんたちもわかりづらいんじゃないかな…と思いました。そのため、現代的に「1時間」「2時間」としています。
当たり前の和風イメージから渡来文化を組み込んだビジュアルへ田沼:ビジュアルも苦労しましたね! イラストレーターさんと相談して、とりあえず和風っぽい村を作ってみても、建物が低くて、木でできてて、みたいな……確かに和風なんだけど、物足りなさを感じていました。
秋吉:キャラクターも怖かったんですよ。妖怪モノのイメージが強く残ってて、おどろおどろしい感じ。
田沼:そう、背景は質素で、キャラはおどろおどろしくて、みんな同じような着物着てて。その解決策がなくて悩んでいたときに参加してくれたのが加茂屋さんと秋吉さんでした。
加茂屋:僕は以前、別の会社のデザイン部でイラスト指示やコンセプトデザインの仕事をしていたんです。シナリオとイラストの橋渡し役の仕事をしたくてテクロスに来たんですが、プロジェクトに入って一番最初に気になったのが「時代感」でしたね。安倍晴明の時代から1000年くらい経った大正時代のイメージ、と聞いたんですけど、その設定ならそもそも平安京の時代感であるはずがない。そこで、平安京の陰陽師の時代が1000年続いたIFのファンタジー和風世界として話を構築していきました。平安京って、実は渡来の文化が多いんですよ。平等院鳳凰堂にも唐の時代のデザインがある。そこから発展していったんだから、和風世界といえども渡来文化が組み込まれていておかしくない。それで僕が取り入れた要素は中国系、インド系、インドネシア系、ギリシャ系……和風のシルエットは保ちつつ、民俗文化にもそういうエッセンスを足していきました。
田沼:たまに「なんちゃって和風」「中華風」「オリエンタル」とかいう声を聞くんですが、ある意味正解です(笑)
海南:その象徴が陰陽寮のデザインなんだと僕は思ってます。和風感もありつつ異質感もある。あやらぶの世界観を代表するものじゃないかなと。

田沼:確かに。あれができる前の陰陽寮は、平安京って十人が聞いて十人が思い浮かべるような一般的なビジュアルだったので……本当に助かりましたね。物語の舞台も大陸になりました。あやらぶ世界は現実の日本と違って島国じゃないんです! 気付いてるユーザーさんもいらっしゃるみたいなんですけど、ユーラシア大陸みたいなイメージですね。普通の和風ゲームじゃないというのをここでも見せています。インドとも地続きなんですよ。
秋吉:そうか、ガネーシャって海渡ってないんだ。
田沼:天竺から陰陽寮まで徒歩で来ました(笑)
加茂屋:海の向こうはヨーロッパがある感じですね。西洋キャラについては6章の話題で触れるとして……キャラクターデザインも僕と秋吉さんで、イラストチームと協力しながら広げていきました。「タコに乗った女の子が悪ぶっている」というキャラを作るとき、僕は着物を着崩した巨乳キャラをイメージしていたんですが、秋吉さんに「もっと変えていい」と言われて。「おっ、じゃあもっとやってやろう!」と方向転換した結果、ミウはあの上着を着ることになりました。

田沼:ミウの服、着物でもなんでもないからね。
加茂屋:ズボン履いてるんですよ。和風ファンタジーのキャラなのに!
秋吉:こういうデザイン、ミウが生まれるまではあやらぶになかったんです。基本的に服装は着崩した着物とか、胸の部分があいた鎧とかで。ミウのイラストは、いやもっとやろう、もっとやろう……って何回もやりとりしましたね。このときにどこまでやっていいかの骨子が固まりました。
田沼:ここまで冒険したキャラが継続的に出していけるかはユーザーさんの反応次第だったんですが、無事に受け入れてもらえて、人気キャラになっているので、僕もほっとしました。今でもこの路線で続けていられるのは皆さんのおかげです!
1章で全滅もありえた?愉快な旅の仲間たち田沼:1章ができたときに、基本的には明るいノリで物語を作っていくことに決めました。メインキャラに漫才みたいな掛け合いをさせながら話を進めていこうと。イズナ、アスカが最たるものですね。2人がいわゆるヒロイン的なキャラクターじゃないのは、明るいことを喋ってもらうためです。重い話をしていても、暗い雰囲気にならないように。
海南:イズナが世界観の説明してるときに、アスカがボケてくれるんですよね。だからずっと説明が続くことにはならない。これも読者を飽きさせない仕組みなんだというのがプロジェクトに参加したときの発見でした!
田沼:イズナに関しては、ある程度失礼なことを言っても気にならないキャラにしたかったんです。彼女だけ見ると険が強いキャラなんですよ。それをアスカやナギ、ゲストヒロインたちに振り回されて、苦労している部分を見せることで、バランスを取っている。そこはかなり意識したところですね。傍若無人そうに見えて生真面目なのがかわいいキャラです。

秋吉:狙い通りになったかなと思いますね。ユーザーさんも好意的に見てくれてるから、4月のエイプリルフールと逢魔襲来イベントのシナリオに繋げられました。
田沼:もしイズナに対して「こいつめっちゃ偉そうで腹立つ」という声しかなかったら、あのイベントはできなかった。受け入れてもらえて本当によかったです。
加茂屋:ナギは驚き役の役割もあるんですが、みんながくじけそうになるときに支えてくれる芯の強い子として描いています。イズナ、アスカ、主人公だけのパーティだったら、たぶん1章の段階で全滅していた。奇跡を起こすことができたのはナギがいたからなんです。
5章までのチャレンジ魅力溢れるあのヒロイン田沼:1章はメインキャラの紹介も兼ねていましたが、2章以降はゲストヒロインの魅力を見せる構成になっています。メインシナリオを細かく区切られた1章完結型にするのは神姫でもUNITIA(*)でもやっていませんでしたので、実験的な試みでした。
(*) 同社運営のゲーム『UNITIA 神託の使徒×終焉の女神』のこと。2020年3月をもってサービスを終了したが、あやらぶでは過去2回コラボを実施している。
秋吉:色んな世界観を見せ、色んな国のキャラを出していきたいというのがありましたからね。
田沼:世界観の切り替えはしやすかったです。2章で早速中国ですし。
加茂屋:僕がプロジェクトに入った段階で4章までベースがあったので、本格的に今のコンセプトが決まってから作ったのは5章以降になりますね。
海南:リリース時は5章までを実装してました。でもあやらぶのシナリオって、丁寧に描写してきっちり完結させることを大事にしてるので、ボリュームがあって長いんですよ。それをユーザーさんにちゃんと読んでもらえるか、リリース前にはわからなかった。でもふたを開けてみると5章までの評判がすごくよくて、「6章も長くてよくない?」となったのを覚えています。リリース前にもう6章には着手してたんですけど、5章までよりも短くしようとしていたんです。そこからボリュームを増やしたので、スケジュールが大変でした……(笑)
田沼:5章もあの内容で出すかどうか悩んだんですよ。ククノチの扱いが攻めすぎじゃないかと。で、加茂屋さんと「どうする?」って議論したんですけど、「一旦委ねてみよう」ということになりました。

加茂屋:その結果、かなり人気の高い章になったのでよかったですね。ククノチもメインヒロインと呼ばれるほどの人気キャラに……!
田沼:リリース前はこの1章完結、1章ごとのボリューム感、ククノチという3つがチャレンジングでしたけど、皆さんに好評をいただいたおかげで継続できるようになりました。
海向こうに繋がる6章どんどん広がる世界観田沼:6章はエヴァとアンナの話ですが、彼女たち西洋キャラにも色々ありましたね。
秋吉:そもそも、日本妖怪じゃないキャラもすでにいる中で、あやらぶの世界観を単純な和風世界のみに留めておくのはもったいないという意識が僕にあったんです。スケールダウンじゃないかと。シナリオチームも同じように思ってはいたけど、どこまでやっていいかで悩んでいた。そのタイミングで「外国の話もOK」ということに決めちゃいました。そしてリリース前にエヴァたちが生まれ、彼女たちが登場する6章も構築されていったんですが……2人を6章追加のタイミングでゲームに登場させるのか、リリース時から登場させておくのかは悩みどころでしたね。でも、あとから急に西洋キャラがぽんと出てくるより、先にいてくれたほうが世界観の見せ方として効果的だと思ったので、リリース時から登場する形になったんです。それに合わせて6章の内容も調整したんですよね。
加茂屋:元のシナリオでは、アンナはアンナの姿のまま「私はエヴァ」と言って現れる予定でした。でも、6章追加の前にエヴァとアンナは実装されてる。彼女たちがどんなキャラかすでにわかってるのに、この登場をしても驚きには繋がらないじゃないですか。
田沼:これが加茂屋さんの案で、エヴァの姿に変身しているアンナに変わったんです。結果的に当初のシナリオよりもずっと面白くなりました。何も知らず6章を読んだ方の「エヴァ、思ってたのとキャラ違う」という感想も見かけたりして、ありがたかったです(笑)

秋吉:これはきっと「最後まで読んだら違った!」っていう驚きになってますね。
田沼:この辺りからあやらぶの物語が「ちゃんと読んだときの満足感がある」と感じてもらえるようになったのかなと思っています。6章のあと、7章からは本筋の話に寄っていきますね。あやらぶって平安時代、陰陽師って言ってはいるけど、日本神話の要素も強いんですよ。初期キャラにもアマテラス、ツクヨミがいて、設定は軽く出してたんですけど、本格的に掘り下げていくのは7章以降。そうして二部に突入していくわけです。
海南:メインシナリオでは和風感を出す、イベントでは世界観の幅を作るという方向で動きはじめたときに、僕もあやらぶのプロジェクトに参加することになったんです。「和風ファンタジーのゲームを作るんだ!」と思ってやってきたら、最初の仕事は「西部劇(*)」!
(一同笑)
海南:2020年5月の逢魔襲来イベントで悪代官をこらしめる「時代劇(**)」を担当したのが、初めての和風っぽい仕事でした。ちなみに最初に担当したキャラもギャル! 和風ファンタジーでギャルって何や?(笑)

秋吉:リコは久々に大変なキャラでした。今よりもっとガッツリ現代的なギャルだったんですよ。伝説のギャルに憧れているギャル。伝説のギャルって何やねん!(笑) さすがにやりすぎだったので、もっと世界観に落とし込んでほしいとお願いして、調整してもらいました。
海南:僕が暴走しすぎたら秋吉さんが止めてくれるので助かっています。着地点として「ヤマンバ様」が生まれて、無事リコもあやらぶ世界に馴染むことができました。
(*) 2020年3月開催の逢魔襲来イベント『荒野を拓く双銃』のこと。華麗に銃を操るレンとマゴイチ、カウガールのようなムツミなど和風ゲームとは思えないキャラクターたちが活躍した。
(**) 2020年5月開催の逢魔襲来イベント『月下の義志〜贋作忍法帖〜』のこと。義賊のカズミ、忍者のサスケ、花魁風のムラサキが登場。舞台も悪代官屋敷という、とても和風ゲームらしいシナリオだった。
現代に通じるヒトとアヤカシの価値観神様はズレた存在?田沼:メインシナリオでその傾向が強く出てると思うんですが、僕は女の子の「等身大の悩み」が好きで、よくテーマに取り上げているんです。なので書いてるとき、「これちょっと暗くない? 大丈夫?」なんて思ったりもします。
秋吉:鬱屈とした感情を持つキャラでも、表面上は明るかったり、それを乗り越えて元気になったりっていう子が多くて、僕は好きですよ。
海南:どこか共感できる部分があるんですよね。はちゃめちゃに行動してるようで、ちゃんと芯がある。
加茂屋:和風ゲームなんですけど、現代的な感性は意識して入れてるんです。ヒロインたちの悩みに共感できるような仕掛けを作ってるんですね。
田沼:ファンタジー世界は現実とは違うので、何も共通する要素がないとキャラの感情に入っていきにくいかなと思っていて。神様がほとんど忘れ去られてるとかも、現代に近い感覚じゃないですか。時代設定が平安というわけではないので、ここは現代的な価値観に近付けて感情移入をしてもらおうと思ったんです。キャラの内面も現代人が見てわかる話に終始してますね。
海南:逆に神様を作るときはその辺のズレを意識してますよね。
田沼:そうですね、神は価値観が違う存在として、明確に線引きをしてます。話の中心はいつも人間です。神はゲストだったり、助けてくれる存在だったり……。
加茂屋:おバカキャラ代表みたいなアマテラスこそ、超然とした自意識を持ってたりするので面白いですよね。

海南:ミヤマとか善如龍王とかも元が霊獣なので、その視点でキャラ作りをしてます。あくまで人間とは違う存在で、価値観も違う。そこのぶつかり合いは個別エピソードでも読んでいただけますね。
田沼:あやらぶで「人間」というと、ヒトとアヤカシ両方を差しています。妖怪を人間と呼称するゲームはあまりないと思うんですけど、そこはさっきも言ったとおり、登場するアヤカシたちの視点にユーザーさんが自分を投影しやすいように、区切りを設けてないんです。なので、この世界にアヤカシ差別とかはないんですよ。
待ちに待った二部開幕!特別ではない人間の旅路は続く加茂屋:二部では安倍晴明や葛の葉、ナギについてなど、今まで秘められていた謎に一気に迫っていきます。イラストチームと一緒に世界観の見せ方やビジュアルにもかなりこだわったので、受け入れてもらえているといいのですが……!
秋吉:新しいキービジュアルはこれまでのものと違って、二部の象徴であることを意識し、ストーリーにフィーチャーして構成しています。この先の展開に想像を膨らませながら、じっくり眺めてみてください。

田沼:4章から名前だけ出ていた安倍晴明も、ついに立ち絵ありで登場しましたね。ようやく辿り着いたという感じです。主人公を安倍晴明にするという選択肢もなくはなかったんですよ。でも僕たちが「安倍晴明」と聞いたとき、「名前は知ってるけど具体的にはよく知らない、何かすごそうな人」というイメージしかないですよね。そういう現代的な価値観と合わせたほうがあやらぶの世界には馴染みやすいと思って、なしにしました。そもそもユーザーさん自身にひとりの人間として陰陽師になって冒険してもらうゲームなので、それが安倍晴明だと違和感ありますし。主人公が特別な存在じゃないのもそういう意図です。
秋吉:エピソードでいえば8章のアスカが象徴的ですよね。アスカがあの世界から戻るときに「あなたは選ばれたわけではなく、ただその場に居合わせただけ」って言われるシーンには僕もはっとさせられました。ストーリーを全部読んでると、主人公やアスカは強い敵にも勝てたり、苦しい状況から生き延びたりできる特別な存在で、周りからもそう見られているんだと思ってしまう。そんなアスカにその言葉が、しかも神様から突きつけられるというのがすごく好きです。

海南:わかります。物語だとずっと彼らにスポットライトが当たっているので、特別だと勘違いしちゃうんですけど。
加茂屋:そこは謎の少年*にも思いきり馬鹿にしてもらいました(笑)
(*) 物語9章『遥かなる旅の果て』に登場するキャラクター。
田沼:もちろん陰陽師は素質ある人間にしかなれないものではあるんですが。主人公は1000年に1人の逸材のような、選ばれし者ではない。ナギと出会ったから奇跡が起きたんです。はじめは何者でもなかった主人公が、旅をして、人と出会うことによって、自分というものを作り上げていく。それは物語の中で一貫して意識しています。二部でどんな出会いが待っているかは……どうぞご期待ください。
秋吉:敵対する勢力も登場しますが、彼らは主人公たちとは正反対の存在です。一部であったような旅や出会いの源流を保ちつつ、二部では世界の裏側や過去の出来事にフォーカスして、物語の核心に迫っていきます。今までとはちょっと毛色の違った物語になる予定ですので、お楽しみに!
田沼:皆さんの感想は本当に励みになってますし、意見も参考にさせていただいています。先日の逢魔襲来イベントとメインシナリオが繋がる内容になったのも、リリース前では考えられませんでした。チハヤを配布キャラにしても「誰?」って言われない確証が持てたのは、皆さんの反応があってこそです。本当にありがとうございます!
秋吉:これからもお問い合わせやTwitterなどで様々なお声が聞けることを楽しみにしています。僕個人でも情報発信や交流ができるよう、先日Twitterアカウントを開設しました。
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